仕事とは何なのか?iPhone修理をしていて感じたこと
今年の1月11日から、春日部にあるうちの事務所でiPhone修理の仕事も始めました。
感動する経験をしたので、皆さんにも知って頂きたいと思い、ピアノ教室運営に関するブログですが
こちらにも掲載したいと思います。
「あの、ガラスが割れてるiPhoneの修理をしてもらいたいんですけど、今から行って大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ。iPhone5の液晶交換ですね。お待ちしております。」
その日も、いつもの電話を受けている感じで応対していました。
しかし、その修理は自分にとって本当に意味のある大きな仕事となりました。
仕事とは何なのかを改めて感じた素晴らしい経験です。
それはお問い合わせの電話から始まりました
「はい、いらっしゃいませ。先ほどお電話を頂いた方ですか?」
「ありがとうございます。どうぞ、こちらにお座りください」
見たところ40代後半の夫婦2人が来店されました。
「息子のiPhoneなんですけど、事故してしまって・・・。修理できますか?」
見せてもらうと、今までにないぐらいの破損状況です。
そこそこ強度のあるiPhone5が無残な姿にフレームから曲がっていました。
ガラスはバリバリに割れ、フロントカメラはむき出し、表面から内部の基盤まで見えている状況です。
iPhoneの中にあるデータが大切なんです
「これは、ちょっと基盤まで破損している可能性が高いです。。。」
「基盤まで壊れていると当社としては修理ができないんですよ。
壊れたパーツを新品パーツに交換する作業はできるのですが、基盤まで壊れていると
本体の新品への交換しか方法がないんです。」
するとご主人が
「実はアップルに電話して聞いたんですけど、アップルだとデータが無くなってしまう新品への交換しかできないんですよね。
中にあるデータが大事で、それでインターネットを検索していたら、こちらのお店が見つかって、
修理できないかなと思ってお伺いしたんです。」
「わかりました。治せるかどうかわかりませんが、やるだけやってみましょう。」
水没修理以外、うちは修理で治らなければ、お客様からお金は一切頂いておりません。
でも、せっかく久喜市からわざわざ来ていただいたのだから、できる限りのことをしてあげようという気持ちでした。
破損状況をみて、「これは無理だろう。修理料金はいただけないな・・・」と思いながらも、
「本当に大切なデータのようだから、とにかく最善をつくして、お客様に状況を説明しよう」
このような気持ちで、修理しだしたことを覚えています。
真剣なお客様の表情が今でも記憶に残っています。
そして作業を開始
「では、まず液晶パネルを交換してみますね。ちょっとコネクタ部分まで破損している感じなので
接続できるかも微妙ですが・・・」
液晶パネルの交換は作業的に20分ぐらいで完了します。
手際よくパネル交換をして、電源を入れてみました。
「やはり、液晶映りませんね。」
残念そうにご夫婦は
「ああ、そうですか。しょうがないですね。」
奥様の目に薄らと涙
その時、奥様が薄らと涙を浮かべていました。
自分は、まだその時は、「花粉症なのかな」と思ったぐらいで、まったくそのことを考えていませんでした。
他にできること、、、もしかしたら、バッテリーが壊れているのかもしれない。
バッテリーを交換して液晶が映らないかったら、やっぱり修理は無理だなと思い、
お客様へ説明しました。
「もしかしたら、バッテリー不具合の可能性もあるのでバッテリー交換をして液晶が映るかテストしてみますね。これでも画面が映らなかったら修理は難しいと思います」
ご主人は深い低い声で
「お願いします」
夫婦2人は祈るようにお願いしてきました。
バッテリー交換作業も比較的簡単な作業なので10分もあれば完了します。
手際よくバッテリー交換をすまし、電源を入れてみると
なんと、液晶が光りだしました。
その時です。
2人は声を出して泣き出したのです。
「良かったね。良かったね。」
ご主人は、奥様に声をかけて肩をたたいていました。
その時、自分はすべてを理解しました。
息子さんの事故、データが大切、そして液晶画面が光った瞬間の涙。
このiPhone5は、息子さんの遺品だったのです。
そのことに気づいたとき、自分も涙があふれてきました。
精一杯の言葉
「お気持ち、お察しします。」
と言うことだけしか伝えられませんでした。それが精一杯の言葉でした。
「まだデータがいつ見れなくなるか、わからない状態です。
この状態で見れるものは、とにかくご覧になって記憶に焼き付けてください。
その後、他のiPhoneでも復元できるか、できることは何でもしますので。」
その後、いろいろと動作確認をしましたが、やはり基盤部分まで壊れているものもあり、
スリープボタンは動かず写真のデータはすべてなくなっていました。
でも、息子さんの通話記録やメールは残っていました。
思い出がたくさん詰まったiPhone
11/30の夜中に最後の通話記録がありました。
「あのとき、〇〇ちゃんに電話していたんだね」
2人は、目にいっぱいの涙を浮かべながら、
懐かしむように会話をして、うんうん、とうなずいていました。
たかがiPhone修理ですが、息子さんの思い出がたくさん詰まったiPhoneです。
いろいろと説明したり、iCloudでバックアップは取れるのか、
appleIDのパスワードは何だ?この方法だったらパスワードを復元できるなど、
いまできる精一杯のことをして、
お店にご来店して頂いてから約2時間、すべての作業は終了しました。
そのご夫婦は、満足した表情で、
「本当にありがとうございました。本当にありがとうございました」
と深くお辞儀をして、お店のドアを開け帰っていきました。
今でも、この文章を書きながら、思い出すと涙が溢れてきます。
iPhone修理は大都市にいけば、どこでもできます。
でも、うちはお客様の心に寄り添ったサービスも提供できるような
iPhone修理業者になれたらと思います。